牡蛎はなぜ当たる?Rが付く月に食べるのはなぜ?

海の危険

多くの人が好んで食べている牡蛎。

写真はカキフライ

しかし、牡蛎で「当たる」ことが多いですよね。同じ二枚貝なのにアサリやハマグリでしょっちゅう当たることはありません。なぜなのでしょうか?

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牡蛎に「当たる」原因

特別に牡蛎だけにあたる原因があるわけではありません。

普通の二枚貝と同様にノロウイルスなどのウイルス、腸炎ビブリオなどの細菌、二枚貝で発生する貝毒や貝に対するアレルギーがあたる原因になります。

ノロウイルス

おなじみノロウイルスは激しい下痢引き起こすウイルスです。牡蛎にあたると言えばノロウイルスが連想されるのではないでしょうか?

ノロウイルスとは

ノロウイルスはカリシウイルス科のウイルスです。

人に摂取されると小腸の中で増殖します。1~2日の潜伏期間のあとで激しい下痢、吐き気、嘔吐、腹痛、発熱が出現します。症状は2~3日で軽快します。

症状は2~3日で軽快しますが、ウイルスは1週間程度便の中かへ排出され続けます。また症状が出ない不顕性感染も多いとされています。

なんと、ノロウイルスの感染は便や嘔吐物中のノロウイルスを手を介して経口摂取してしまうことが主な原因です。魚介類を介した食中毒の割合はたった3.4%とのことです。

人から人への感染が最も多いのです。

人には10~100個のウイルス粒子があっただけで感染してしまいます。感染した人の糞便中には1g中に50億個、嘔吐物30ml中に3000万個のウイルス粒子が存在しています。

ノロウイルスと牡蛎の関係

牡蛎を含め、二枚貝は繊毛粘液摂食と言い、エラに海水を流した時にエラに引っかかるプランクトンなどを食べています。

海水中から貝の中に取り込まれたノロウイルスは、以前二枚貝のエラで増殖すると考えられていました。しかし現在はノロウイルスは人でのみ感染、増殖することがわかっています。

牡蛎からノロウイルスに感染するのは、人から排出されたウイルスが川などから海へ入り、貝に取り込まれることで発症します。

牡蛎は海水の濾過量が多く、おおよそ1匹で1時間に18~20ℓの海水をろ過しています(大きさは違いますがアサリは1時間に1ℓ程度です)。ここで大量に摂取された海水中にノロウイルスがいると牡蛎の中腸線(内臓)にこのウイルスが取り込まれます。

内臓に取り込まれたウイルスは数日で排出されますが、排出される前に人体に取り込まれると食中毒として発症します。

ノロウイルスによる食中毒は毎年10月から出現し、11月後半から急激に増加します。12月、1月にピークを迎え、4月~5月に終息していきます。

冬に発症が多い理由はまだよくわかっていませんが、牡蛎がノロウイルスを排出するスピードが遅いのではないかと言われています。

ノロウイルス食中毒の予防

ノロウイルスはアルコール消毒に強く、効果があまりありません。

人から人への感染が中心であり、しっかりした手洗いやまな板や包丁の熱湯消毒が大切です。牡蛎の食中毒予防としてはやはり「加熱」という事になります。85℃~90℃で90秒の加熱が有効とされています。

写真は焼き牡蛎

牡蛎の生食基準は養殖された牡蛎の海水中の大腸菌群最確数が70以下となっています。これは素人では判定できませんね。

生で食べたいときは生食用として売られているものを食べることが大切です。

腸炎ビブリオ(など細菌感染)

食中毒でおなじみの菌ですね。腸炎ビブリオが最もよく知られていますが、それ以外の菌での食中毒もありえます。

腸炎ビブリオ菌とは

Vibrio parahaemolyticusが本名になります。

沿岸の海水中や海泥中に生息しています。高温が好きで、水温が 15℃以上になると活発に活動します。通常は20~30分に1回分裂増殖していますが、水温が20℃を超えてくると分裂速度が倍増します。真水の中では増殖できません。

食中毒としての潜伏時間は8~24時間(最短で数時間)です。

激しい腹痛、下痢などが主症状です。発熱、はき気、嘔吐を起こす人もいます。

ビブリオ菌と牡蛎の関係

腸炎ビブリオ菌が特に牡蛎に取り込まれやすいわけではありません。

上記ノロウイルスと同様に、海水中のビブリオ菌が牡蛎のエラを経由して内臓に取り込まれる経路と殻などに付着しているものが増殖する経路があります。

ビブリオ菌などのバクテリアは牡蛎の内臓に取り込まれてから約20時間で排出されます。

腸炎ビブリオによる食中毒予防

ウイルスとの一番の違いは貝の中で増殖することです。

牡蛎の保存状態で温度管理が悪いと増殖し食中毒になります。冷蔵が不十分な輸送や保存でビブリオなどの細菌は増殖してしまいます。

しっかり冷やしておきましょう

牡蛎をしっかり冷蔵してビブリオを増殖させないこと、真水で洗浄すると安全性があがります。また腸炎ビブリオ菌は冷凍で死滅します。

二次感染を防ぐため、魚介類に使った調理器具類は良く洗浄・消毒しておくことも大切です。

もちろん加熱は特に有効で、60℃、10分以上の加熱が良いとされています。

加熱の定番カキフライ

腸炎ビブリオ以外の菌について

売られている牡蛎から分離される可能性(感染するかどうかは別として‥)のある細菌として①エロモナス、②セラチア菌、③クレブシエラ、④大腸菌群、などが報告されています。また⑥ビブリオ・バルニフィカスなどまれながら重症化しやすい細菌も存在します。

①エロモナスAeromonas hydrophlia)は河川や海水中に生息し、カキや魚介類から高頻検出されます。本菌は腐敗を促進させる細菌でもあり、敗血症,胃腸炎,肺炎などの日和見感染を引き起こすことがあります。本菌は低温でも増殖し、増殖最適温度は 28℃です。
十分に加熱することによって死滅します。食中毒細菌の一つですが、ここ十数年間ではこの菌による食中毒事件の報告例はないようです。

②セラチア菌Serratia marcescens)は空気中や水中、土壌、食品など広く自然界に分布がみられる菌です。肺炎,敗血症などを起こすことがあります。

③クレブシエラKlebsiella pneumoniae)は下痢性胃腸炎を起こす可能性を持つ腸内常在菌です。報告では製造工程中にヒトから汚染されたものと考えられています。

④大腸菌群Escherichia coliなど)は直接的、間接的に便汚染さえた可能性があることを示唆します。

⑤ビブリオ・バル二フィカスVibrio vulnificus)は腸炎ビブリオの親戚です。汽水域の海底などを好む細菌で魚介類の生食(約9割)や切創(約1割)から感染します。免疫低下や肝疾患の方、鉄剤内服中の方で重症化します。詳しくはこちらをご覧ください。

こうしてみると「牡蛎で」高頻度に食中毒を起こす菌はやはり腸炎ビブリオと言えそうです。

牡蛎の養殖場、水質がひたすら大切で

結局生ガキを食べようと思った場合はとにかく水質の良いところで育ったものを求めるしかないようですね。

貝毒、アレルギー

牡蛎を含む二枚貝はすべてプランクトンを摂食しています。渦鞭毛藻類の有毒プランクトンを摂食することで貝が毒化することがあります。

貝毒は毒性の検査が定期的に行われており、クリア(4MU/g以下で合格)しないと出荷できないため、売られているものは安全です。

日本では①麻痺性貝毒、②下痢性貝毒が報告されています。ともに熱に強く加熱処理しても当たってしまいます。

①麻痺性貝毒食後約30分で発症。舌、唇、顔面、手足のしびれ、運動失調が出現します。重症の場合には、1日以内に呼吸麻痺で死亡することがあります。12時間を越えれば、回復に向かいます。

②下痢性貝毒の症状は腸炎ビブリオに似るといわれていますが、発熱がなく、軽症です。食後約4時間で発症します。 下痢(水様便)や腹痛、嘔吐、はき気などが出現します。通常は、3日以内に回復します。死亡例はありません。

貝毒に関しては、詳しくはこちらを参照ください。

何度食べても「当たる」人はアレルギーの可能性があります。通常食べてから1時間以内に発症し、腹痛や下痢と蕁麻疹を伴うことが多いです。アレルギーの人は食べないのが一番ですね。

牡蛎の分類とR月の関係

英語で書いた時、5月から8月まではRが入りません。つまりこの5月~8月は牡蛎を食べない方が良いと考えられているわけです。

これは毒などが原因ではなく味が悪いからです。

まずは牡蛎の分類です。牡蛎はマガキと岩ガキに分けられます。

マガキは殻がやや薄いのに対し岩ガキ殻が厚く、ごつごつとしているのが特徴です。岩ガキが小さければ鑑別は難しいでしょう。また岩ガキは3m~15mとやや深いところに生息していることが多いです。

マガキ
岩ガキ

両方とも、秋から春先にかけて栄養分を蓄え、夏に産卵します。

①マガキの旬

マガキは夏になると栄養分が身の方から生殖腺の方にすっかり抜けてしまい、かつ一気に放卵するため、味が突然落ちてしまいます。このため、マガキは春先の産卵期に入る直前が一番美味しく食べられる時期になります。

まずくなるため、牡蛎は5月~8月は牡蛎を食べない方が良い、つまりはRが付く月に食べるべし!となるわけです。

②岩ガキの旬

一方イワガキの方はというと、夏には栄養分が生殖腺に移るのですが、その大きな生殖腺が美味となり、放卵が徐々に行われるので味が落ちず、夏が旬となります。

つまり、マガキは冬から春先にかけて美味しくなり、逆にイワガキは夏に美味しくなる、ということです。Rがつかない月は岩ガキを食べればOK!

R月に食べることとと牡蛎に「当たる」ことは別の問題でした。

結局なぜ牡蛎は当たるのか

さてまだなぜ牡蛎で当たりやすいか十分解説ができていないと思います。

アサリなどの刺身はどうなのでしょうか?調べてみるとやはりアサリでも「生食すれば当たる」ようです。つまりは内臓(中腸線)を取らずに生食するかどうかで当たるかどうかが決まっているようなのです。

よく考えれば牡蛎以外で内臓を生で食べる2枚貝はほぼありません。お寿司の赤貝やホッキガイ、自分で採って刺し身にするバカガイ、すべて筋肉部分を刺し身にしており、内臓は食べませんよね。

生ガキ

結局、牡蛎で当たるのは牡蛎の海水濾過量が多く、内臓(中腸線)にウイルスや細菌が分布する確率が高いことに加え、内臓までも生食することが当たる原因と考えられます(momiji考察)

自分で採って食べる時の注意

生食用の牡蛎は養殖している海域の大腸菌群最確数が70以下となっています。これは素人では判定できません。自分で牡蛎を採って食べる時は加熱して食べましょう。

あえてどうしても生食せざるを得ない場合、内臓を除去し、周辺のひらひらの部分だけを真水で洗ってから食べるという事になると思われます。めんどくせー。

私(momiji)は毎年自分で採って食べています。生食よりも加熱したものが好きなのでラッキーでした。今年は取りに行けるでしょうか??

ちなみに生食するときはケチャップをかけて食べると臭みがなくなって好きです。一度やってみてください。

牡蛎は海のミルク、君は家の毛玉!

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