海の魚介類から感染する寄生虫

海の危険

海産物から感染する寄生虫の王様はアニサキスですが、海にはアニサキス以外の寄生虫もいます。

海産物からの寄生虫は人体を終宿主とすることができず、基本的には脱落していきますが、その過程で様々な症状を引きおこします。

※2021年12月18日に公開した記事を、大複殖門条虫の項を追記し、 2022年1月15日リライトし再度公開しました。

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粘液包子虫

粘液包子虫はアメーバの仲間で、魚の筋肉に寄生しています。生食で人体に一過性の感染を引き起こします。その際に食中毒の症状が出現します。

クドア・セプテンプンクタタ(Kudoa septempunctata)

ヒラメに感染している 粘液包子虫 です。約10㎛の大きさで、三角錐状の形をしています。花びらのようなきれいな形をしています。

クドア・セプテンクタタWikipediaより引用。Meejung Ahn, Hochoon Woo, Bongjo Kang, Yeounghwan Jang and Taekyun Shinさん撮影

ヒラメの生食で人体に取り込まれます。胃では死なずに、腸管に達したところで感染が起こり、下痢を引き起こします

ヒラメ、こんなん釣れたら最高!

この「クドア」は胆汁に弱く、24時間以内に死滅してしまいます。このため、症状は長続きしません。

国産の養殖ヒラメでは対策が進んでいるようです。輸入によるものと天然もので時として感染します。

様々なクドアの仲間

クドア・セプテンプタータ 以外のクドア感染はあまり有名ではありませんが、様々な報告があります。

人に症状(下痢)がでた報告で多いのは以下のものです。

  • スズキからのkudoa iwatai感染
  • カンパチからのUnicapsua seriolae感染
  • マグロからのKudoa neothunni、Kudoa hexapunctata感染(マグロからの報告は多いですが、幼魚で多く成魚になると少なくなるとの統計あり)
スズキ
カンパチ
マグロ

他にもマアジ、マゴチ、シイラ、クロダイ、サワラ、イシダイでの報告も見られます。

クドアの仲間は様々な種類で、多くの海水魚に存在しているようです。私(momiji)は‥気にせず刺身で食べちゃうこととします。…(((;^^)

皮膚爬行症(creeping disease)

皮膚爬行症(creeping disease) は人体に侵入した寄生虫が成熟できず、皮膚の下を移動することで皮膚に移動する線状の紅斑が出現するものです。( ´Д`)

寄生虫は本来の終宿主と違う宿主に寄生してしまうことで、成熟できずに一定期間(多くは数か月)皮疹を出した後に勝手に軽快することが多いようです。

この皮膚爬行症(creeping disease)は顎口虫、旋毛線虫、鉤虫、糞線虫、糸状虫など様々な寄生虫が原因となります。この中で海産物から感染する寄生虫が報告されています。

  • ホタルイカ生食からの旋毛線虫感染
  • シラウオ(メインの生息域は汽水)生食からの日本顎口虫感染
ホタルイカ
シラウオ

この皮膚爬行症(creeping disease)は、皮疹が出ているところを切って取り除いても治療完了できないことが多いようです。寄生虫の体に反応して皮疹が出てくるころには、寄生虫そのものはさらに進んだところに 移動してしまっているためです。

物理的な除去は広範囲に切除をするか進行方向を狙って切除するのが良いとされています。

現在の治療は「イベルメクチン」の内服が多く行われています。0.2㎎/Kgの内服を2週間の間隔で2回の内服が一般的です。

死滅しなかったという報告もありますが、多くの報告で成功しています(日本での学会発表検索で確認しています)。

私(momiji)はホタルイカとシラウオは火を通すようにします。

大複殖門条虫(Diplogonoporus grandis)

大複殖門条虫とは

サナダムシの1種で、日本海裂頭条虫そっくりなものです。

最大10mほどになり、クジラを終宿主にしてるようです。

海の寄生虫は人間を終宿主にできないものがほとんどなのですが、 大複殖門条虫 は人間を終宿主にできてしまいます。

まだ生活環が完全に解明されていません。海水中の卵→オキアミなど→シラス→クジラ(終宿主)ではないかと考えられています。

感染経路

中間宿主がまだ十分解明されていませんが、生シラスを食べる文化があるところで発症報告が多く、シラス(イワシの稚魚)が感染源の中心ではないかと考えられています。

生シラス

また、シラスを捕食したサバやカツオなどからの感染も想定されています。

予防

イワシ、サバ、カツオなどを生食を避け火を通して食べるようにしましょう。

どうしても生食したい場合は-20℃以下で24時間以上凍結させてから食べることが推奨されています。

症状

症状は通常なく、感染に気付かないことが多いです。

時折軽微な症状があるとされますが、腹部膨満感や食欲不振などが出現する程度です。

日本海裂頭条虫と 大複殖門条虫 の鑑別

日本海裂頭条虫と 大複殖門条虫 はどちらも「きしめん」の様な平べったく、細長い外観であり、区別が難しいです。

文献によれば以下の様な違いがあるようです。

①頭節の違い

は日本海裂頭条虫が棍棒状で吸溝が縦に2条であるのに対し,クジラ複殖門条虫は,うちわ状で2条の吸溝を持つとされています。

②体節の違い

日本海裂頭条虫では一つ一つの節がやや正方形に近くなる半面、 大複殖門条虫 では横に細長い長方形になります。また、 大複殖門条虫の方が肉厚です。

③生殖腺の違い

日本海裂頭条虫では、各節ごとに1組の雌雄生殖器があり、中心に縦に並びますが、 大複殖門条虫では、2組(かそれ以上)の生殖器があり、2列に並びます。

また、 大複殖門条虫の方が人の体内で成熟しにくく、生殖腺が未熟になるとのことです。

人体を終宿主とする海の寄生虫

おそらくこの「大複殖門条虫」が唯一人体を終宿主にできる海水魚からの寄生虫です。

刺し身をどこまで食べるか?悩みの種になってしまいそうですね。

momijiは一応生シラスは食べないようにしようかと思います。アジやカツオは食べてしまおうと思います。感染してしまったら駆虫することにして‥

「そんなに刺身が食いたいのか?」と刺身を食べないもみじがおっしゃる。刺身食べたいよ!

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