海にはヒレに毒を持つ魚が多数います。
魚の毒の特徴は以下の通りです。
- 刺された後、 直後から激しい痛みが出現
- 刺された場所は腫脹し、疼痛としびれが出現
- 重症になると嘔気、下痢、腹痛、呼吸困難が出現する
- 死んでから刺されても発症する
海水魚に刺された時の初期対応はどの魚でも同じです。 まず「温める」ことが大切です。 刺されて痛い時に温めるのは勇気のいることだと思いますが、温めると嘘のように痛みが引いていくそうです。魚の毒はすべて熱で失活するため、痛みが再燃しなくなるまで30分~90分程度温め続けます。やけどしない程度の温度で、約43度以上が良いとされています。以下のお話で加温と書いているのはすべてこの温度です。
病院到着後は必要に応じた対症療法となります。毒針が残っている可能性があればレントゲンで確認し、残っていれば除去します。疼痛が十分軽快しない場合、内服の解熱鎮痛薬や、エピネフリンの入っていない局所麻酔を使用します。また抗生剤投与や破傷風トキソイドの使用を検討します。
①ゴンズイ
背ビレ、左右の胸ヒレに毒棘があります。 毒は腺でなく、棘の被膜が生成。毒の成分はプロトスパスミン(神経毒)、プロトリジン(溶血毒)、プロトトキシンが含まれるとされています。 刺されると腫れて痛み、水疱形成なども生じます。全身症状としては時に発汗、発熱、悪心が出現します。毒の量にもよりますが、通常数時間から数日疼痛は持続するとのことです。受傷部の壊死なども時に出現します。
持ち帰るときは背ビレ、腹ビレの棘をニッパーなどで切っておきましょう。 前述のとおり、加温が大事です。
②アカエイ
尾ビレが鞭状になっており、その中部~尾部にかけて鋭い棘があります。棘は毒腺のついた鞘でおおわれており、毒棘が刺さった際に深い裂傷となります。その際に毒の鞘が破れ毒が注入されます。エイの毒はタンパク毒で、セロトニン、5-ヌクレオチダーゼ、フォスフォジエステラーゼが含まれます。刺されると激しい痛みとともに患部が大きく腫脹します。数分以内に傷周辺は貧血となり白~青色に変色します。重症では嘔吐、めまい、振戦、けいれん、呼吸困難、血圧低下、不整脈などが出現し、重症例では死亡することもありえます。傷は後に壊死や潰瘍となります。
刺された場合、棘が抜けそうならゆっくり抜きましょう。その後海水または真水で洗浄し、傷の中に残った棘や異物を取り除きます。出血が多ければ圧迫して止血してください。そのうえで加温してください。エイの刺傷は重症化することがあるので病院へ行きましょう。
病院ではまず洗浄します。出血が見られれば止血(圧迫、止血剤、麻酔後電気焼灼)。疼痛が強ければアドレナリンを含まないキシロカインを局所注射や合成オピオイド系鎮痛薬の使用も検討します。必要に応じレントゲンなどで異物を確認し、あれば外科的に摘出します。ショックなど全身状態の変化があれば酸素吸入を行いながら対症的に管理が必要になります。二次感染に対し抗生剤や破傷風トキソイドを投与検討します。
③オコゼ
他にヒメオコゼも同様に毒があります。画像がありませんが、尾びれに暗帯が2本あるのが特徴です。
オコゼは背ビレ、腹ビレ、尻ビレに毒があります。 南方に住むオニダルマオコゼが最も最強の毒を持ち、背ビレの棘13本、腹ヒレ2本、尻ビレ3本の毒棘をもっています。棘は強靭でビーチサンダルなども貫通します。棘が刺さった際に毒腺から毒が注入されます。毒はタンパク毒でストナストキシンが主成分。ハブ毒の81倍の強さとのこと。激痛、溶血、血小板凝集、腫脹、血圧低下、心臓伝達障害などの作用があります。海外では血清もあるようですが日本には常備されていないようです。
刺された場合、激痛が起こり、同時にしびれや知覚鈍麻などの神経障害を伴います。疼痛は約1時間でピークとなり、1日間持続。皮膚は腫脹し、患部付近は循環不全で青白くなります。全身症状としては発熱、悪心、下痢、呼吸困難、心不全、血圧低下しショックとなり、死に至ることもあります。反応が激しい場合、皮膚は壊死に至ります。
刺された場合、まずは棘が残っていればゆっくりと除去してください。その後海水もしくは真水で洗浄し、 傷の中に残った棘や異物を取り除きます 。受傷直後であれば毒を絞り出しましょう。 そのうえで加温してください。そのまま病院へいきましょう。
病院ではまず洗浄します。疼痛が強ければ内服での鎮痛薬とアドレナリンを含まないキシロカインを局所注射も検討します。レントゲンなどで異物を確認し、あれば外科的に摘出します。全身状態は対症的に管理。二次感染に対し抗生剤や破傷風トキソイドを投与します。
ハオコゼはオニダルマオコゼ、オニオコゼほど強くはありませんが良く釣れる魚なので注意が必要です。 良く釣れる魚で体調10㎝未満くらいです。やはり背ビレ、腹ビレ、尻ビレに毒があります。初期治療は加温でOKです。
オコゼ類を持って帰るときは棘という棘すべてをハサミなどで根元から切り落としていくことをお勧めします。刺されないように注意しましょう~。
④カサゴ
上記2種が一般的に毒とされていますが、普通のカサゴ(ガシラ)も微量の毒を持っているとのことです。
カサゴ類もオコゼ類同様に背ビレ、腹ビレ、尻ビレに毒をもっています。毒はタンパク毒で、痛み、腫れ、嘔吐、呼吸困難を生じます。
刺された場合、まずは棘の残存がないか確認。海水もしくは真水で洗浄し、加温してください。
病院では 疼痛が強ければ内服での鎮痛薬とアドレナリンを含まないキシロカインを局所注射も検討します。全身症状があれば対症的に管理、二次感染に対し抗生剤や破傷風トキソイドを投与を検討します。
⑤アイゴ
アイゴは背ビレ、腹ビレ、尻ビレと顔面に隠れた毒棘を持っています。タンパク毒なのはわかっていますが、毒の詳細は現在不明です。刺されると数時間~ひどいと数週間程痛むとされています。患部は腫脹し、しびれや麻痺、関節痛が起こることもあります。
刺されてしまった場合、まずは異物の残存がないか確認し、洗浄してください。その加温してください。
病院では 疼痛が強ければ内服での鎮痛薬。二次感染に対し抗生剤や破傷風トキソイドを投与を検討します。
魚刺傷まとめ
ゴンズイは背ビレと胸ビレ、その他の刺毒魚は背ビレと腹ビレ、尻ビレに毒がある場合が多いです。刺されたら異物を除去して洗浄(海水でも真水でもよい)し、やけどしない程度に温めてください(43℃以上でやけどしないていど)。症状が強ければ病院へ行きましょう。
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