日本の毒グモたち、セアカゴケグモとカバキコマチグモを中心に解説

山の危険

毒グモと言えば、セアカゴケグモが有名ですね。

セアカゴケグモはどれくらい怖いのでしょうか?また日本にセアカゴケグモ以外の毒グモはいるのでしょうか?

クモは多かれ少なかれほぼすべての種類が毒を持っています獲物を捕るときに咬みついて毒を使っているのです。

日本で報告されたクモ咬症として報告されているものはセアカゴケグモ、カバキコマチグモ、アカオビゴケグモ、オニグモ、オオヒメグモ、ヤチグモ、フクログモ、アシダカグモ、オオグロケブカジョウコグモなどです。

その中で重症になった報告はセアカゴケグモとカバキコマチグモが圧倒的です。

それ以外のクモは咬症自体が各数例の報告のみです。クモに咬まれること自体があまり多くないようです。

セアカゴケグモ、カバキコマチグモについてまとめてみました。

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セアカゴケグモ

1㎝程度の小さなクモです。背中に赤い紋があります。

ちなみにオスは4mm程とさらに小さく、背中の赤い紋も目立ちません。

セアカゴケグモの生態

セアカゴケグモはオーストラリア原産のクモです。

日本では1995年から発見され、各地で報告が相次いでいます。

人工的な環境を好み、工場や公園、住宅地や駐車場などにあるブロックの裏側や道路にある側溝の隙間、植木鉢やプランター、エアコンの室外機の隙間などに住んでいます。

セアカゴケグモの毒と症状

セアカゴケグモの持つ毒はα‐ラトロトキシンという神経毒です。

咬まれた場合、①初期症状、②局所症状、③全身中毒症状の3つの症状が出てきます。

①初期症状

咬まれた瞬間は針で突かれたような痛みがあります(軽い痛みのみのことも)あります。その痛みはすぐに治まりますが、5分~1時間程度で鈍い痛みが出現してきます。

時間と共に痛みの強さと範囲は拡大し、咬まれた部位と離れたところにも疼痛が出現することがあります(足を咬まれたのに腹痛がでたり、手を咬まれたのに胸が痛んだり)。これがセアカゴケグモによる咬症の特徴でもあります。

②局所症状

咬まれた所に通常は発赤などは出現しません(軽度の赤みや腫れはありうるとのことです)。咬まれた所が発汗することがしばしば見られます。

③全身中毒症状

咬まれてから1時間以上たって出現します。神経毒の作用で発汗、嘔気、発熱、めまい、頭痛、胸痛、腹痛、頻脈、下痢、関節痛、筋肉痛、筋痙攣などが出現します。

これらの症状は数時間で弱まりますが、1週間程度は反復して出現します。

セアカゴケグモに咬まれた時の治療

疼痛に対しては冷却が一定の効果があるようです。

一般的な痛み止め(アセトアミノフェンやロキソプロフェン)は無効とされており、疼痛管理にはジアゼパムなどの鎮静薬やオピオイドが良いとされています。使いやすいものとすれまトラマールやトラムセットでしょうか。

疼痛が激しい場合は入院、全身管理の上、モルヒネなどを投与することになります。

全身症状に対しては基本的に対症療法しかありません。

特異的な治療としてはセアカゴケグモの毒に対する血清があります。血清はオーストラリアで生産されていますが、現在は入手困難な状況とのことです。研究施設から分けてもらうしか方法がないようです。

超重症の際、血清の使用を検討することになります。血清は馬の血で作られているため、アナフィラキシーの対策が必要となります。イメージとしてはマムシ血清の使用と同じイメージでよいでしょう。

仕様の際は、添付のテスト液で皮内反応を行い、アレルギーが出そうかどうかチェックします。その後抗ヒスタミン剤を全身投与します。アレルギーが強く出そうな場合はステロイドも投与しておくとよいでしょう。15分以上たってからセアカゴケグモ抗毒素血清を1アンプル(500単位)筋肉注射します。1時間して効きが悪ければ追加投与を行います。

ほぼ使うことはないでしょう。

カバキコマチグモ

カバキコマチグモは日本を代表する毒グモです。

2㎝程度の小さなクモで笹などの葉を巻いて巣にしています。

カバキコマチグモの巣

クモ自体の写真が入手できていません。自分で撮ってアップできれば良いのですが‥

カバキコマチグモの生態

カバキコマチグモは幼体の間、丈の低い草むらに生息します。メスは成体になるとイネ科などのやや丈の高い草むらに移動しその葉を巻いて巣を作ります。

メスは夜間に巣から出て、餌を求めて徘徊します。雄は巣を作らず、徘徊して暮らします。

巣を開いて咬まれることや、徘徊しているクモが家などに入ってきてしまい咬まれることがあります。

カバキコマチグモの毒と症状

カバキコマチグモの毒はノルエピネフリン、エピネフリン、オクトパミンなどのカテコールアミン、セロトニン、スペルミン、ヒスタミンが主体とされています。また同定されていない神経毒も持っています。

咬まれた時の症状はとにかく超痛いことです。皮膚の所見はとしては、少し赤くなって腫れることがある程度で重症感のある皮疹は通常出現しません。

とにかく「痛みがひどい」のがカバキコマチグモ咬症の特徴です。過去の報告では蕁麻疹や嘔吐が出現したとの報告が1件ありました。

カバキコマチグモに咬まれたときの治療

カバキコマチグモ咬症の治療はまだ確定的なものが存在していません。様々な文献的報告がありそれをまとめてみました。

①軽症の時、ステロイド剤の外用と普通の痛み止め(アセトアミノフェンやロキソプロフェン)内服で翌日には軽快しているようです。高頻度に抗ヒスタミン剤(鼻炎や蕁麻疹の時使用する内服薬)が併用されています。

②疼痛が激しい場合、普通の痛み止めでは全く効果がなく、点滴によるステロイド全身投与や局所麻酔薬の局所注射が行われています。それでも痛みが激しい場合は麻薬を使用します。

③変わった方法、火傷しない様に温めた蒸しタオルを当てることで上手くいったとの報告もあります。魚に刺された時の方法と同じですね。まだ報告としては1例のみでしたが、試してみて良い方法と思われます。

その他の蜘蛛

オオグロケブカジョウコグモ

石垣島、西表島の山林に生息し、体長3~4㎝程度になります。咬まれるとかなり痛いとのことです。

momijiの経験

顔面(額)をクモに咬まれて受診された患者さんを診察したことがあります。痛みはありませんでしたが顔面全体がむくんでおり、呼吸困難のリスクもありました。局所性の強い蕁麻疹であった様です。

入院の上全身のステロイド投与と抗ヒスタミン剤投与で翌日には退院できました。

咬んだクモを持ってこられていましたが、そこら辺によくいるハエトリグモの様なクモでした。こんなクモで顔面全体が腫れるのかとびっくりしました。

不用意にクモは触らない方がよさそうですね!

ピアノの上を巣にするもみじグモ、毛だらけになるからやめて―(ノ´Д`)

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