蜂刺され

山の危険

ハチに刺された時、痛くて腫れるだけではなく、特殊な蕁麻疹が出現することがあります。急速に全身に蕁麻疹が出現するため、皮膚以外の全身症状が出現し、場合によっては死に至るものです。

アナフィラキシーショックというものです

多くはスズメバチに刺された場合に発症します。1回目に刺された場合では発症せず、2回目以降で発症します。

スズメバチ

ハチの毒も基本的には虫刺されと同じ反応形態を取ります。虫刺されのところと同じ図です

ハチに刺された際、1回目はまだ体のアレルギーが準備されていないため、最初の黄色い線の反応はわずかです。蜂毒による直接の痛みや赤みであり、即時型アレルギー反応(蕁麻疹)は出現しません。1日程度経過した後刺されたところが腫れてくるアレルギー(図の赤い線)が出現し、しばらく続きます。詳細は(虫刺され、おおまかな解説)にてお話しています。

一度刺された際に、人間の体は同じ毒が来た時のために備えをします。蜂の毒だと、この備えが異常になってしまうことがあります。その際、2回目に刺された際に即時型アレルギー反応(蕁麻疹)が刺された場所だけでなく、全身に出現してしまうのです。

蕁麻疹

こんな皮疹が全身に出現してしまいます。

アナフィラキシーショックになると、全身の蕁麻疹のみならず、血圧低下、気道閉塞による呼吸困難、消化器症状が出現することがあります。血圧低下を補うため、心臓の鼓動は早くなります。

蜂の毒

蜂の毒は、「活性アミン」、「低分子ペプチド(発痛)」、「酵素類(アレルギー発症)」が含まれています。ここで問題になるのが酵素類です。この酵素はスズメバチとアシナガバチは互いに交叉反応性があることがわかっています。このため、スズメバチに刺され後アシナガバチに刺された場合や反対にアシナガバチに刺された後でスズメバチに刺された場合でもこのアナフィラキシーショックが発症する可能性があります。ミツバチの場合交叉反応は基本的に起きないとされています。ほかの多くの蜂との交叉反応は研究されていないため、不明です。調べた範囲では見つけられませんでした。

アシナガバチ
ミツバチ

ちなみにミツバチの針には返しがついています。通常刺すときは返しまで使わないのでちくちくする程度です。本気で刺しに来た場合は返しが残って抜けなくなります。その際はミツバチも死んでしまいます。

蜂に刺された際、アナフィラキシーに特注意が必要なのは1回目に刺されてから2年以内に再度刺された時であるとの報告があります。これには個人差が大きく、敏感な方は2年以上たってもショックになると思われ、あまりあてにしすぎない方がよいと思います。

蜂に刺されないために

蜂は黒色が攻撃色です。黒い色の服装を避け、頭にも明るい色の帽子をかぶるのがベターです。蜂の巣に近づくと周囲をしつこく飛び回ったり、「カチカチ」と威嚇の音を出してきます。このようなときは一旦動きを完全にとめ、ゆっくりとした呼吸のみにします。蜂などの昆虫は複眼でものを見ています。複眼は(大事な部分を隠している)モザイクのような見え方をしており、明瞭に見ていません。動きが止まると蜂は相手が認識できなくなり徐々に去っていきます。その後ゆっくり動いてその場を離れましょう。また、香水などをつけていると蜂を誘引してしまうことがありますので野外活動の際、香水などをつけるのは避けた方が望ましいでしょう。

蜂に刺されてしまったら

蜂に刺されてしまった時、可能であればハチの種類を覚えておいてください。難しければ大きさや特徴(大きくて細いとか‥)でも結構です。治療の時の参考になります。刺された直後であれば毒を絞り出し、きれいな水で洗います。蜂毒は水に溶けやすいとされているためです。

1回目に刺された場合慌てなくて結構です。腫れて痛いですが、命への影響はまずありません。スズメバチ100匹くらいに刺されると全身症状が出現する程度の毒の量になるようです。治療はステロイド剤の外用と痛み止めの内服程度です。抗ヒスタミン剤内服も念のため処方される場合が多いです。手持ちに鼻炎の内服薬やステロイド外用剤があれば使用されたら良いと思います。念のため刺された場所以外に蕁麻疹が出てこないか確認しておきましょう。蕁麻疹が全身に出てきた場合はすぐ医療機関に受診してください。

刺されるのが2回目以降の場合、用心したほうがいいです。蜂のアナフィラキシーは基本的に刺されてから1時間以内に発症します。刺されたところから離れた場所で蕁麻疹のような皮疹が出てきた場合は要注意です。この場合はすぐ医療機関を受診してください。鼻炎などでもらっている抗アレルギー薬、抗ヒスタミン薬があれば飲みましょう。しかしこれらの内服薬は一般的に効き目が出るのに1時間程度かかります。急速にアナフィラキシーが出現してくる場合、内服では間に合いません。また蕁麻疹がひどい場合は一人で行動せず必ず人を呼びましょう。急速に悪化した際に助けてくれる人が必要です。昆虫によるアナフィラキシーはひどければ循環状態悪化に15分で至ってしまいます。

医療機関では1回目に刺されて腫れている場合は強めのステロイド外用をします。痛みが強い時は非ステロイド性の痛み止め内服などを行い、感染のリスクがあると考えれば抗生剤の内服、蕁麻疹、アナフィラキシーのリスクがあると考えた場合は抗ヒスタミン剤内服などを行います。

アナフィラキシーショックの診断は蕁麻疹がありかつ呼吸器症状もしくは循環器症状(血圧低下)もしくは持続する消化器症状のどれかがあれば診断となります。

問題は2回目に刺された場合です。明らかに重症のアナフィラキシーショックの場合アドレナリンの筋肉注射を行います。投与量は0.01㎎/Kg(最大で成人0.5㎎、子供0.3㎎)通常、成人では通常0.3㎎、小児では0.15㎎です。この量はエピペンという携帯型アドレナリン注射と同じ量です。

アナフィラキシーの場合、①治療はアドレナリン筋肉注射②抗ヒスタミン剤全身投与(静脈ルートが確保できていれば静脈注射、血圧低下などで血管が確保できない場合は筋肉注射)常容量の倍量程度、③全身ステロイド投与(メチルプレドニゾロン500㎎など)の投与を考慮します。ステロイドの全身投与は効いてくるのに時間がかるとされています。また、抗ヒスタミン剤は呼吸症状には無効とされています。

持病でない不整脈、低血圧、心停止、意識消失、嗄声、犬吠様咳嗽、嚥下困難、呼吸困難、チアノーゼ、我慢できないような腹痛、繰り返す嘔吐があれば重症のサインです。このような場合は①のアドレナリン使用の適応となります。明らかに軽症であれば②抗ヒスタミン剤全身投与③全身ステロイド投与のみで重症化しないか慎重に見ていくことも可能です。

また、アナフィラキシーは軽快しても再燃することがあるとされ、最低8時間は気を抜かず、しっかりモニターする方が良いと言われています。

蜂はアウトドアで頻繁に遭遇するのでともに気を付けていきましょう~(ΦωΦ)

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