海の寄生虫、アニサキス

海の危険

海の魚介類から感染する寄生虫は多くありません。

川と海、両方で暮らすサケ、マス、鮎などを除き、海水魚からの感染する寄生虫で、人体が終宿主になりうるものは調べた限り、ありません。基本的に一過性に人体に寄生し、様々な症状をもたらした挙句、脱落していきます。

海の寄生虫の中で最も有名なのがアニサキスです。

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アニサキスとは

アニサキスの本来の最終宿主はクジラ、イルカ、アザラシなどの海棲哺乳類です。これら 海棲哺乳類の胃に寄生しています。

一般にアニサキスと言われる寄生虫は①Anisakis simplex(普通のアニサキス、こいつが90%程度を占める)と②Pseudoterranova decipiens (シュードテラノーバ、やや大型で丸まらない)の2種類がほとんどです。

アニサキス 刺身の所では丸まっていることが多い

オキアミとそれらを食べた魚介類、その魚介類を食べた大型魚類やイカなどが中間宿主となっていきます。これらアニサキスが寄生している魚介類を生食することで人体に感染します。

基本的に人体を終宿主とすることができず、寄生しようと努力する際に様々な症状を引き起こします。

一般的に人に感染するのは第3期幼虫です。

写真(左)は買ってきた鮭の切り身についていたアニサキス。動いています。写真(右)は双眼実体顕微鏡で撮った写真です。

アニサキスと似ているボルボソーマ(Bolbsoma)という寄生虫もいます。珍しいですが、感染した場合、症状が重篤になることが多いです。ボルボソーマは2㎝程度で橙色をしています。

アニサキス症の原因となる魚介類

すべての海水魚やイカなどの生食ががアニサキスの原因になります。調べてみたところ、汽水の魚でも報告があります。

全国的に報告が多いのがサバ、イカです。北海道や東北ではイカ、タラ、サケ、ホッケでの報告が多く、関東以西では、サバ、イワシ、アジ、カツオの報告が多いとされています。

サバ

イカ

基本的には生食によって生きた虫体が消化管に到達して発症します。浅く漬けたしめ鯖や短期の醬油漬けのイクラでなどはアニサキスが死滅していないことがあります

日本では年間2000~3000件のアニサキス症があると推定されています。

アニサキス症の症状

初発症状としては急激な腹痛、悪心、嘔吐です。また食物の通過障害を訴える場合もあるようです。

95%程度の確率で原因食物摂取後24時間以内に発症します。最長で5日程度のこともあります。

アニサキスは人体を終宿主にできないため、腹痛などの症状は、基本的に1~2週間で軽快します。

アニサキスに対してアレルギーが強い場合、全身の蕁麻疹が出現し、重症であればアナフィラキシーショック(蕁麻疹が重症のため、血圧が下がりショック状態となる)となることもあります。

①胃アニサキス症

アニサキスは海棲動物の胃に寄生するため、基本的には人間にも胃に寄生しようとします。この胃アニサキス症がメインの症状であり、全体の約90%を占めています。

通常原因海産物を生食後、約 2~8 時間以内に発症します。周期的でしぼるような激しい胃痛が出現してきます。

②腸アニサキス症

回腸末端に好発します。原因海産物生食後、数時間から数日で腹痛が生じ、腸閉そくの様な症状も出現することがあります。時として虫垂炎と間違えられるようです。

③消化管外の症状

非常にまれですが、消化管を穿通してしまい、腹膜炎をおこしたり腹腔内に腫瘤を作ったすることがあります。このような場合では外科的手術が必要となります。

④アニサキスアレルギー

アニサキスのアレルギーがあると蕁麻疹を発症します。蕁麻疹の発症は食べてすぐに蕁麻疹が出現する場合と食べた後数時間(6時間位)で遅発性に出現する場合があります。時間の違いが何に起因するかはまだ正確には解っていません。

重症の場合アナフィラキシーショック(蕁麻疹が重篤のため、血圧低下を来す状態)になることもあります

アニサキス症の診断、検査、治療

①診断と検査

基本的な症状は腹痛になります。

腹痛の患者さんでの詳細な問診(魚介類の生食歴聴取)でアニサキスを疑うことが大切です。アニサキスの可能性がある場合に、内視鏡で確認をしていく流れになります。

血液検査で、白血球、好酸球の増多やCRPの上昇がみられることがあります。しかし、実際には感染してから発症までの時間が短いことが多く、異常が見られないことがほとんどです。

抗アニサキスIgG抗体は初感染後1週間から上昇を始めます。初感染の場合は使い物になりません。再感染の場合にIgG抗体、IgE抗体の上昇が早期から検出されます。その場合は24時間以内に70~80%の確率で検出可能とされています。

②治療

内視鏡で白い糸くずの様な虫体を探して摘出することになります。内視鏡では、よく洗うことと、インジゴカルミンでの染色で粘液と鑑別がしやすくなるとのことです。

虫体はゴムの様に硬く、ちぎれることはありません(歯で咬んでもなかなかちぎれないそうです)。

1匹だけでなく、複数の感染があり得るので1匹みつけて満足しないようにする必要があるようです。

アニサキスアレルギーで出現した蕁麻疹は通常の蕁麻疹に対する治療を行います。

アニサキス症の予防

完全な予防は刺身を食べないことになってしまいます。

冷凍すると―20℃程度では48時間では完全に死滅、醤油の原液中では18時間程度で死滅することがわかっています。加熱には弱く、60℃で数分で死滅します。

刺身を食べる際は「しっかりよく噛んで食べる」しかないようです。原始的ですね~。

また、アニサキスの成分による重症蕁麻疹が出る人は焼いても食べない方が良いとされています。これは蕁麻疹を起こすアニサキスの成分は熱が加わっても変性しないためです。

私(momiji)は刺身を食べたいので、よく噛んで食べるようにします(゚ε゚*)。

下、アニサキスで苦しむもみじ‥ではありません。

なんと刺身をあげたら‥食べませんでした!?アニサキス対策完璧。ほんとに猫なのか?(ΦωΦ)

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