日本人が多く罹患している感染症は虫歯と水虫だそうです。
足が痒ければ水虫と考えたくなりますよね。何となく、水虫は治しにくいものと思っていませんでしょうか?
水虫は白癬菌といってカビの仲間が原因菌となります。
ここでは普通に人につく水虫を解説していきたいと思います。
水虫菌の特徴
水虫菌はもともと死んだ動物の毛をご飯として暮らすカビでした。それが生きている動物に持続的に感染するように進化していきました。さらに動物専用の菌、人専用の菌などと分かれていったのです。
人につく水虫の菌はなんと人に感染するために進化しています。人専用なのです。
水虫菌の栄養源は「角質」です。人で角質があるのは皮膚の表面、爪、毛です。普通の水虫菌はこの3つの場所以外には通常感染しません。最深でも爪の基部及び毛の中までです。体の中にも基本的には入りません。ただ何らかの形で体内に入ってしまうと必死になって生き延びようとし、様々な症状が出てくることがあります。
「水虫」の原因菌のほとんどはtrichophyton.rubrumという種類です。水虫に対する多くの薬剤はこの菌をターゲットにして開発されています。まれにtrichophyton.mentagrophytesという種類(これは数種類の総称です)も検出されます。この菌は雄株と雌株があり、結婚?して子孫をのこします。
人専用になると他の水虫と何が違うか?それは人の免疫力をあまり刺激しない様になっていることです。そうするとちょっとの感染では症状がでないため排除されません。また、人間は獣に比べ、体毛が少ないため、角質の分厚い足底などを好んで感染します。
「水虫が痒い」時、そこには大量の水虫菌が存在しています。しかし痒くないところにも少量の水虫やその胞子があり、これらをなくさないと水虫は完治できないことになります。
また免疫反応の強い人は水疱ができ、痒くなりやすいのですが、免疫反応の弱い人(糖尿病など)は痒くならず、カサカサして分厚い角質になることが多いです。痒くないと自分が水虫ではなく、ただのかさかさ肌と思いこんでしまう事があります。
水虫の治療
昔は「水虫を治せたらノーベル賞」などとのうわさ話もありました。
しかし現代で水虫を治せないのは薬の「塗り方」が悪いからです。
水虫の外用剤は基本的にどれもよく効きます。治らない原因は以下の2つです。
- 外用する範囲が狭い
- 外用する期間が短い
痒くない場所にも水虫菌がいることを想定し、外用する範囲はかなり広くするのがおすすめです。足指含め、足全体に外用剤を塗っていく必要があります。また、外用していても胞子・分生子は生存しているため、それらが垢と共に排出されるまで外用を続けないといけません。足の角質が垢になるのに通常2か月程度かかります。念のため3か月~4か月は塗っておくとよいことになります。体の場合は最低2週間、できれば3週間から4週間外用しておくのがおすすめです。
広範囲にかつ長期間外用すれば95%程度の確率で治癒させることができます。
爪水虫はしっかり薬を効かせた状態で爪が伸び、悪いところがなくなる必要があります。治療が難しく、皮膚科に受診していただきたいところです。
水虫の予防
さて、白癬は人がいる所から人に感染していきます。
通常人から角質と共に部屋の中に落ちた場合、約半年間生存しています。この落ちている菌を人がくっつけることで感染していきます。
体に白癬菌が付着した場合、通常湿度100%(靴下と靴を履いた状態)で感染するのに約1日半かかります。毎日入浴して洗っていれば基本的に感染しないことになります。
ところが傷のある皮膚では半日程度で感染してしまいます。足などに傷があるとき、多人数が素足で歩くような環境があれば、早めに洗っておくと感染を防ぐことができます。
さて部屋の掃除はどうしたらよいでしょうか?
水虫を持った人のお部屋で全く掃除をしていないと1踏み1匹くらいの密度で水虫が落ちているといわれています。
通常の掃除機をかけると水虫は部屋に数匹まで減少し、拭き掃除などしっかり行えばほぼゼロになります。
普通のおそうじで十分です。
変わりものの白癬菌
人間の水虫でも毛が好きな菌がいます。trichophyton.tonsuransという種類です。
毛が好きであり、人の頭によく感染します。
この菌はもともと日本にはいませんでした。体の接触があるスポーツなどで感染し、海外から持ち込まれてしまいました。
この菌も人専用であるため、若干の感染のみでは症状が出ません。格闘技系の部活などで蔓延してしまうことがあります。
頭部にいつの間にか脱毛があったり、毛が黒点の様になって脱毛しているときは要注意です。診断をしっかりするときはもちろん皮膚科を受診してください。
軽症であればコラージュフルフルなどのシャンプーを使うことで治療できます。予防での使用も問題ありません。
シャンプー
リンス
他にも泡石鹸などの製品があります。
獣が好きな白癬菌
獣につくために進化した水虫菌は毛に感染することを好みます。
よく遭遇するのがmicrosporum.canisという種類です。猫に寄生するよう進化しており、猫の耳周辺が最も好発部位です。
人間に感染しなければ良いのですが‥人にも感染してしまいます。これらの菌は人用には進化しておらず、免疫と激しい戦いが起こるため、激しい症状となります。頭などにつくとケルスス禿瘡といって頭がじゅくじゅくになり、膿がでて、毛が抜けてしまいます。(永久脱毛になることもあり得ます)
毛がボソボソの動物、とくに猫には気を付けましょう。動物を触ったら手を洗うのが基本です。
近年はハリネズミの飼育から感染する種類も報告されています。
抗真菌剤の市販品について
水虫の治療薬はいずれも「エルゴステロール」というカビの細胞壁の物質を合成阻害するものです。人体には存在しないものなので長期外用しても問題はありません。(体質によってはかぶれたりすることがあります)
作用する酵素によって系統が分かれます。
市販品は色々ありますが、これらがおすすめです。
①テルビナフィン(アリルアミン系)
テルビナフィンは病院でもよく使用されています。かぶれにくい印象です。カンジダには効くとされていますが、弱いとの評価もあります。
ラミシール
ダマリン
②ラノコナゾール(イミダゾール系)
白癬以外にカンジダにも効きます。病院の薬剤としてはルリコンが近縁になります。
ピロエース
③ブテナフィン(ベンジルアミン系)
カンジダには適応がないのが注意点です。
ブテナロック
色々あげてみましたが、広く、長く外用すればどれもしっかり効くはずです。ジュクジュクしたところに塗るとかぶれることがあるので注意です。軟膏基材のものはややかぶれにくくなります。
また、水虫と思っていても「実は違うものであった」という事も珍しくありません。趾間で白っぽくしなしなしている場合、水虫ではなく、「紅色陰癬」という病気(軽い細菌感染)のことも多いです。
微妙な時は皮膚科で診断してもらうのが一番です。
お家に迎えてしばらく後、子供2人に体部白癬が発症。犯人という事にされていたもみじ。内服薬とコラージフルフル(人用)で洗われ、今ではつやつやの猫?になりました。
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